それからしばらくの間電車に揺られ、学校の最寄駅に着く。



「……最悪…」



降りるところまでは良かったんだけど、どうやら今日は同じ電車だったようで。



違う車両から、その容姿が目立つ楠木が降りてきた。



いつも通り不機嫌そうな無表情で、昨日とは全然違う。



いつもならバレずに楠木が先に改札に向かい、鉢合わせになることもましてや目を合うことさえもないのだけど……。



「……っ」



今日に限って楠木が、私の方を向いた。
自然と交わる視線。



急いでそらすけど、残念ながら今更だ。



「田城」



やけに楠木の声がはっきり耳に届く。
駅は足音や話し声で騒がしいというのに。



諦めて、楠木の方を向けば…彼は私の方へと近づき、そして優しく微笑んだ。



いや、普通に反則だから。
さっきまで無表情で不機嫌だったくせに。