私は諦めて楠木について行く。
握られた手は温かい。



斗真とはまた違う、楠木の手の感触。



……あ。



そういえば私、さっきまで泣いてたのにすっかり頭から抜けていた。



泣いていた理由も中学の時も。
その上自然と笑えていた。



私が単純なのか、それとも……。



「……なんだよ、こっち見て」
「いや、なんでもない」



慌てて楠木から顔をそらす。
まさか楠木のおかげだなんて、そんなわけないよね。



大人しく楠木の隣を歩き、家へと向かう。



意外と早く家に着き、その間に流れていた沈黙は苦じゃなかった。



「ここがお前の家?」
「あ、うん…そうだよ」



私が頷くと楠木が私から手を離す。



少し寂しく感じたのは絶対気のせい。
やっと離してくれたと思うべきなのだ。