「…私っ。私、死にたくないっ…」
 



声が裏返りながらも、向日葵は叫んだ。
 

とうとう、俺の瞳から、涙が流れてきた。頬がくすぐったくなる。


どうやって行動すれば、何を言えばいい?
 

ここで、向日葵をぎゅっと抱きしめたら、キスをしたら。
 

でも、ダメなんだ。向日葵のためにも、俺自身のためにも。
 

俺は、向日葵の背中に手を回すと、優しくさすった。
 



『俺だって、向日葵には死んでほしくない。もっと生きて、一緒にいよう。』
 

そう言いたかった。言いたかったけど…。
 




「…やっと、死にたくないって、思えた、な…」
 



俺は、小さく、そう言った。
 

ドーン!
 

花火の、大きな音が聞こえる。はるか向こうで、鮮やかな光が見えた。
 

でも、俺の耳から聞こえたのは、向日葵の泣き声と、俺の鼻をすすって、向日葵の背中をさする音だけだった。