ドクン、と自分の心臓が脈打つのがわかった。


段差から足が落ちたせいだと思ったけど、それよりも…相葉くんに抱きとめられたからだと…思う。



「…ほんっとお前って危なっかしいな。ここは低い段差だからまだいいけど、怪我しかねないから気を付けろよ。」



そう思ったのも束の間、頭上から呆れを含んだ相葉くんの声が聞こえた。


あたしは体勢を持ち直して、相葉くんはあたしに回していた腕をそっと離した。


あたしってば本当まぬけだ…。



「ご、ごめん相葉くん…」


「お前が怪我してないならいい。」


「してない!ありがとう。」


「ん、じゃあ行こうぜ。」


「うん!」



あたしが靴を履き替えると、相葉くんは下駄箱の出口の方へ、足を向けた。



「…お前のことなら、俺はいくらでも助けるから…。」



背を向けてぼそっと言ったその言葉は、あたしには聞こえていなかった。