「よかったら、少しロビーに出ませんか」
「あ…はい」
風見さんに促され、貴重品の入ったバッグだけ持ってひとまず大広間を出た。
ロビーに出たとはいえ、どこもかしこも人でごった返していた。
「連絡先交換するには少しうるさいですね」
「…いえ、それはちょっと」
「もう少しあちらへ移動しましょうか」
半ば強引に背中を押され、どんどん人混みから離れた違う場所へと案内される。
─────困ったな、どうしよう。
断るにしても、それなりに地位のある人だから、うまく断らないとあとでマキさんたちや職場のみんなに迷惑がかかってしまう。
一筋の望みに賭けて、チラリと後ろを振り向いてみる。
鬼塚さんの姿が見えれば、なにかしら助けてくれたり…なんて淡い期待を抱いてみたものの。
目立つはずの彼の姿は、私には見えなかった。
「風見さん、どこまで行くんです?」
静かな通路へ出たところで、ようやく立ち止まってくれたので声をかけてみた。
風見さんは私に背を向けてスマホに目を向けている。
連絡先の交換を、本当にここでするつもりなのか…。
悟られないように、そっと私はバッグから自分のスマホを出して、ささっと操作してジャケットの内ポケットに入れ直した。
離れたところからマイク越しのアナウンスの声が聞こえる。
『では───後半の部を始めて参りたいと思います───』
「あの、もう始まってしまいますが…。風見さんも戻らないとまずいのではないですか?」
腕時計で時間を確認し、こちらを向こうともしない彼に思わず首をかしげた。
「風見さん?」
「あ…はい」
風見さんに促され、貴重品の入ったバッグだけ持ってひとまず大広間を出た。
ロビーに出たとはいえ、どこもかしこも人でごった返していた。
「連絡先交換するには少しうるさいですね」
「…いえ、それはちょっと」
「もう少しあちらへ移動しましょうか」
半ば強引に背中を押され、どんどん人混みから離れた違う場所へと案内される。
─────困ったな、どうしよう。
断るにしても、それなりに地位のある人だから、うまく断らないとあとでマキさんたちや職場のみんなに迷惑がかかってしまう。
一筋の望みに賭けて、チラリと後ろを振り向いてみる。
鬼塚さんの姿が見えれば、なにかしら助けてくれたり…なんて淡い期待を抱いてみたものの。
目立つはずの彼の姿は、私には見えなかった。
「風見さん、どこまで行くんです?」
静かな通路へ出たところで、ようやく立ち止まってくれたので声をかけてみた。
風見さんは私に背を向けてスマホに目を向けている。
連絡先の交換を、本当にここでするつもりなのか…。
悟られないように、そっと私はバッグから自分のスマホを出して、ささっと操作してジャケットの内ポケットに入れ直した。
離れたところからマイク越しのアナウンスの声が聞こえる。
『では───後半の部を始めて参りたいと思います───』
「あの、もう始まってしまいますが…。風見さんも戻らないとまずいのではないですか?」
腕時計で時間を確認し、こちらを向こうともしない彼に思わず首をかしげた。
「風見さん?」



