会場は某有名ホテルの大きな会場だった。
おそらく主要都市各地から来たのであろう人たちでごった返していた。
有名人のライブでもあるのかというほどの人混みに、鬼塚さんは少し圧倒されていた。
「すごい人ですね…。自分は関係なくても中に入れるのでしょうか」
気を抜くとあっという間にはぐれそうになるくらい、ロビーにも入れないほどの開場待ちの人たちがざわざわと待ち構えている。
私が見失われたとしても、彼はとても大きく目立つので見つけやすい。
もしも離れてしまったら、とりあえず大きなひとを探せば彼にたどり着けそうだ。
私はポケットに入れていたスマホを取り出して、画面を彼に見せる。
「関係者にはQRコードが発行されてるので、ロビーには入れても会場の中には入れないかも」
「なるほど!自分はどこで待っていたら分かりやすいですか?」
「ロビーにいてくれたら、鬼塚さんおっきいからすぐ見つけられると思う。終わって出てきたら私から声をかけるようにするね!」
承知です!と彼は無意識なのだろう、敬礼をしたのですかさず背伸びしてその手をぺしっと払った。
すると彼は「ダメです!」と慌ててあたりを見回すように猫背になって縮こまると、小声で
「指一本触れちゃいけないって言われてます!だからたぶん折笠さんが自分に触るのもダメです!」
と、大真面目な顔で言うのだった。
「うちのお父さん、そこまで神経使ってるの?信じられない!」
自分の父ながらうんざりしていると、彼はすぐに首を振った。
「いや、警視総監ではなく三上さんです!」
「…………え?」
「なにか?」
「えーっと…小太郎さんが?」
「はい!」
しばし、お互いに目を合わせる。
彼の真意をくみ取るのに、かなりの時間を要した。だが彼は彼で「三上さんの指示は警視総監の指示」みたいな感覚なのだろう。
私だけが分かる、小太郎さんの意図。
会えないのがもどかしい。
「もうすぐ開場なので、行ってくるね。二、三時間くらいかかっちゃうと思うけど」
係員の男性が開場のアナウンスをしたので、鬼塚さんにそう言って私はホテルの中へと足を踏み入れた。
おそらく主要都市各地から来たのであろう人たちでごった返していた。
有名人のライブでもあるのかというほどの人混みに、鬼塚さんは少し圧倒されていた。
「すごい人ですね…。自分は関係なくても中に入れるのでしょうか」
気を抜くとあっという間にはぐれそうになるくらい、ロビーにも入れないほどの開場待ちの人たちがざわざわと待ち構えている。
私が見失われたとしても、彼はとても大きく目立つので見つけやすい。
もしも離れてしまったら、とりあえず大きなひとを探せば彼にたどり着けそうだ。
私はポケットに入れていたスマホを取り出して、画面を彼に見せる。
「関係者にはQRコードが発行されてるので、ロビーには入れても会場の中には入れないかも」
「なるほど!自分はどこで待っていたら分かりやすいですか?」
「ロビーにいてくれたら、鬼塚さんおっきいからすぐ見つけられると思う。終わって出てきたら私から声をかけるようにするね!」
承知です!と彼は無意識なのだろう、敬礼をしたのですかさず背伸びしてその手をぺしっと払った。
すると彼は「ダメです!」と慌ててあたりを見回すように猫背になって縮こまると、小声で
「指一本触れちゃいけないって言われてます!だからたぶん折笠さんが自分に触るのもダメです!」
と、大真面目な顔で言うのだった。
「うちのお父さん、そこまで神経使ってるの?信じられない!」
自分の父ながらうんざりしていると、彼はすぐに首を振った。
「いや、警視総監ではなく三上さんです!」
「…………え?」
「なにか?」
「えーっと…小太郎さんが?」
「はい!」
しばし、お互いに目を合わせる。
彼の真意をくみ取るのに、かなりの時間を要した。だが彼は彼で「三上さんの指示は警視総監の指示」みたいな感覚なのだろう。
私だけが分かる、小太郎さんの意図。
会えないのがもどかしい。
「もうすぐ開場なので、行ってくるね。二、三時間くらいかかっちゃうと思うけど」
係員の男性が開場のアナウンスをしたので、鬼塚さんにそう言って私はホテルの中へと足を踏み入れた。



