鬼塚さんはいかつい見た目と違って、話すとわりとお茶目だった。
そしてまさかの私と同い年だった。絶対に年上だと信じて疑わなかった自分の先入観といったら。

仕事へ向かう満員電車に揺られながら、彼は巨体を縮こませ私を守るように踏ん張ってくれた。
ただし、ものすごい適度に距離を保ってくれている。

「あの、もっとこっち来ても大丈夫。少し余裕あるから」

「駄目ですッ！折笠さんには指一本触れられないですッッ！！触れたら自分、殺されます！！」

「声！大きい！」

シーッと人差し指を立てると、慌てて大きな手で自身の口を塞いでいる。


「小太郎さんは…昨日の事件のことでいないの？」

電車から降りてから私が尋ねると、「ッス！」と謎の返事を返された。
それはイエスなのか？ノーなのか？

「そんなにたいへんな事件になっちゃったんだ…」

「自分は何も言えないです、申し訳ありません！」

「そうだよね、大丈夫。…ていうか、歳も同じなんだから別にタメ口でも」

改札を抜けて人混みを抜けて、やっと視界が開ける。