何も変わらない私と小太郎さんの関係。

彼の過去を知ったことで勝手に少しは距離が縮まったかな、と期待をしたりもしていたけれど、特に何も変わらなかった。

梨花の言う通り、もう「好き」と伝えるしかないのかと思うと、そこだけはなんだか勇気は出なかった。


「でも、もうなんだかんだ彼が美羽ちゃんのSPになってからけっこう経つよね?」

由花子さんにそう言われるまでは気がつかなかった。
そんなに経ったっけ?

『そうだな、まず半年。何もなければ一年で外してやる』

クラブで薬の売人に接触され、父から警護をつけると宣言されて─────数ヶ月。
今となっては、小太郎さんがそばにいることが当たり前になっていたが、いつかは終わりが来るのだ。

父の言葉が本当なら、半年まであと少しだとしても、その半年が過ぎたなら一気に縛りが緩くなるのは明らかである。

ちょっと寂しい気持ちになりながら、残りのガパオライスを食べ切ると、いいタイミングでデザートが出された。
由花子さんはお皿を私の前に置くと、得意げに笑った。

「今日のデザートは、バスクチーズケーキ」

ミントと少しのクリームが可愛らしく添えられていて、焼き色も綺麗で美味しそう。

「いただきます」

と手を合わせていると、カランコロン、といつものドアが開く音がした。


「いらっしゃいませ!おひとり?」

「はい」

「お好きなお席にどうぞ」

由花子さんと男性の声がして、男性がカウンターに座るのが視界に入ったが、私は気にせずチーズケーキを口に運ぶ。