少し前は紙で処理していたものも、今はすべてタブレット端末ひとつで済ませられる便利な時代。
本を運んだりする作業や、整理したり細かなところを掃除したり、そういった原始的な部分はもちろん残っているけれど、苦ではなかった。

セルフレジが導入されたり、在庫管理･発注はタブレットでできるようになり、効率はグッと上がったと思う。


週末に入荷してくる予定の新作書籍をどこに並べるか、もし並べたらどの書籍を店頭から減らすのか、計画書の作成もタブレットで全部できる。
タブレットを片手に店内をウロウロする。

この店内を店員が歩き回る仕事は、それこそ万引き防止の意味もあったりするのだが。


「すみません」

タブレットを抱えながらしゃがんで在庫の確認をしていたら、不意に声をかけられて顔を上げた。
三十代前半くらいのスーツ姿のメガネをかけた男性だった。
すらりと身長が高く、しっかり髪は整えられており、清潔感がある人だった。

顔立ちもすごく綺麗だった。いわゆる、イケメンの部類であろう。

「はい、なにかお探しですか？」

急いで立ち上がり、シワになったエプロンをささっと手で直す。

男性は白いスマホを取り出すと「この本を探していて…」と私に画面を見せてきた。
一緒になって画面を確認すると、すぐにピンと来て

「こちらにございます、どうぞ」

彼が探していたのは、今や出すもの出すもの話題になって有名作家になった人が、駆け出しの頃に出していた書籍だった。
同じ作家でも、出版社が違っていたりすると売り場が少し変わったりしていて見つけ出しにくいこともある。

広い店内を案内し、目的の書籍が置いてある場所へ着くと、さきほどスマホで見せられた本を棚から出して彼に手渡した。