箱入り娘に、SPを。

しかし、当の小太郎さんはあまり浮かなかった。

「あいつ、その…口が悪いだけだから。気にしないでね」

「スイーツ仲間なのにどうして?」

「いや、そこじゃなくて」

彼にして歯切れ悪く、言葉を選んでいるように見える。

「もったいないとか…、えーと、なんか色々と」


あぁそうか、と気がつく。

タケルさんに言われたことを気にしてくれているのだ。
“せっかく捜査一課に行ったのにもったいない”
なかなかのパワーワードを放っていたのは確かである。

「私も思ってます、もったいないなぁって」

さっき買ったワンピースが入った紙袋を見下ろしながら、ゆったりとした足取りで歩く。
でこぼこしたアスファルトが続いている。

「きっと、小太郎さんは優秀な刑事さんでしょ?ツネさんたちも、早く戻ってきてほしいと思ってるだろうなと」

「僕はそんな優秀なわけでは」

「そう考えると、さっきもらった名刺に書いてあったような、専用のボディーガード?みたいなの、そういうのに頼った方がいいんですかね」

あのような会社があるんだなぁと、世の中は知らないことだらけだ。
そしてそこまで言って、違うかと思い直す。

「誰かに頼らずに、生きてみたいなぁ」


スマホをかざして改札を抜けて、ふと隣を見ると誰もいないので、慌てて振り向く。
小太郎さんが一歩遅れてついてきたので、どうしたのかと見やった。

彼はやはりずっと浮かない顔だった。
そんなに気にしなくてもいいのに。

「これは我が家の問題ですから、小太郎さんが気にすることじゃないですよ」

「うーん、そうじゃなくて」