箱入り娘に、SPを。

お会計を終えて、包まれたワンピースは紙袋へ入れてもらい、カウンターを出てきた椿さんから両手でそれを渡される。

「結婚式、楽しみですね」

「はい。色々と選んでいただいてありがとうございました」

「─────あ」

そこで私の背後を見て、椿さんがおもむろに手を振る。

振り返ると、お店の出入口ドアの近くにいた小太郎さんのそばに、見知らぬ男性が立っていた。おそらく、歳は彼と同じくらいの。

「おいコタロー。いつの間に彼女できたんだ?」

「…もうその話はお腹いっぱい」

せっつかれるように問いかけられて、小太郎さんはうんざりしたような顔をしていた。


「美羽さん、こちら友達の真山武(たける)。僕のスイーツ仲間」

何度か耳にしたタケルという名の人物。やっと会えた。
「スイーツ仲間」と紹介されていて、私は吹き出し、タケルさん本人は嫌そうな顔をしていた。

「他にももっとなんか違う紹介の仕方あんじゃないのか?」

「事実を言っただけでしょ」

二人の掛け合いを見ても、付き合いが長いのは分かる。

「初めまして、折笠美羽です」

紹介してもらったのだから、こちらも一応きちんと自己紹介せねばと頭を下げた。
さらっとタケルさんが尋ねてくる。

「小太郎とはいつから付き合ってるの?」

「いや、あの、それは、その」

まごついていると、小太郎さんが割って入った。

「守秘義務があります」

「あー、なんだよ、もしかして仕事?ボディーガード?」

「守秘義務があります」

「せっかく捜査一課行ったのに、俺と同じような仕事してんのか?もったいねぇな」

「守秘義務があります。もったいなくない」