梨花に“恋の相談”と名づけられ、それこそ「違うんだよね」とそこだけは否定できた。

「恋の相談をしたいっていうより…」

「えー、どうしたいの?」

「だって警護してくれてる限り、この関係は永遠に変わらないんだもん。ずーっとモヤモヤするのもやだなーって」

息を吐いているのか、ため息をついているのか、どちらとも言えない呼吸をしながら私がつぶやくと、梨花は一瞬ちょっとだけ考え込むように首をかしげた。
しかし、すぐにパッと明るい表情になった。

「簡単じゃん。好きって伝えなよ!」

「無理に決まってるでしょ!!」

姿勢も体勢も無視して、前のめり気味に梨花に訴えてしまった。


「いったん水分補給で休憩挟みましょうか!」

と、ちょうどタイミングよく講師の先生がそう言ってくれたので、私と梨花はタオルで汗を拭いながら水を飲みに移動する。

「じゃあどうするの?」

梨花はいつも、誰かを好きになったら告白、そこに直結するタイプである。
高校の時だってすごくモテていた印象がある。告白もされていたが、逆に自分から告白もしていた。

その真っ直ぐさがかっこいいなと思っていた。
思ってはいたが、私にはそれはできなかった。

「少なくとも、今は無理だよ。このまま彼が私のSPでいる限りは」

「四六時中ずーっと一緒にいるのに!伝えないなんてもったいないじゃん!」

「SPを外してもらった方がいいのかなあとは思ってる」

ジムの設備は充実していて、手ぶらで来てもいいようにしっかりウォーターサーバーが設置されている。
そのサーバーから二回目の給水でコップに水を注いだ。

コクコクと水を飲む合間に、梨花は流れてくる顔周りの汗をピンクのタオルで押さえながら

「外してもらったら好きって言えるの?」

と詰め寄ってくる。

「それは─────分かんないけど」

「覚悟が決まってないなら、まだ外してもらわない方がいいね」

「いつまで一緒にいられるんだろう。いつまで守ってくれるんだろう。むしろそっちが不安になってきちゃって」