「ただそれは…、これまでも美羽さんに警護をつけていたとお聞きしていますので、いたしかたないのかなと思います。守られる立場の方ですので」

「たしかに小学生の時からだからな…」

おそらく小学生の頃の私のことでも思い出しているのであろう、父の目が壁に掛けられている昔の家族写真へと向いた。

「でも、大丈夫です」
と、小太郎さんが言った。


「美羽さんは、とても優しいひとです。注意力は散漫ですが、周りの皆さんには、すごく愛されていると思います。それは彼女のいいところだと思います。……ご家族に…」

妙な間があいた。

「ご家族にきちんと愛されて育ったのが、よく分かります」

これには父も母もなんだか嬉しそうだった。
そしてすぐに、父の表情が曇る。

「そうか…そうだったな。三上くん、君はたしかご家族が…」

「─────はい」


父と小太郎さんの間にだけ流れる空気。
ここで無闇やたらに詮索してはいけないような。


「注意力散漫か…」

「うふふっ、なんだか分かるわあ」

父のつぶやきに、母が吹き出していた。

「公開処刑されてる気分なんだけど…」

私はソファにどっともたれて、そのまま隣の小太郎さんを見上げた。

彼の背筋はまだ伸びたままだった。