帰りは、見事なまでに満員電車だった。
ジムへ向かうには電車を二回乗り換えるのだが、どの電車も凄まじい混雑具合。
乗り込むだけでもひと苦労の乗客がひしめく車内だ。
着替えなども持っていかねばならないため、荷物もいつもより多く、両手で抱えるようにしてなんとか乗り込む。
小太郎さんがあとから乗り込もうとしたものの、私がギリギリに乗ったからか一瞬困ったような顔をしたのが見えた。
その彼も、次々に乗り込んでくる他の乗客に埋もれて見えなくなってしまった。
─────でも、この電車に乗り遅れたら梨花と待ち合わせしているジムに間に合わない。
彼のことだから、一本乗り遅れたところでまたいつの間にか降車してしばらくしたら姿を現すだろう、とこの時の私は楽観的だった。
というか、彼とうまく離ればなれになったのは初めてかも?
なんていう考えさえよぎってしまい、申し訳ないながらも優越感を覚えてしまうほどだった。
あと二駅したら乗り換えだから、すぐといえばすぐなのだが。
乗り換える駅で彼を待つか…などと考えながらぎゅうぎゅうの車内で電車に揺られる。
両手で前に抱えたジム用の荷物と仕事用バッグを何度か握り直して、体勢を立て直していると、腰のあたりに違和感を覚えた。
「………?」
誰かの、手?
確認しようにも、乗客同士で押しつぶされていて、まったく見えない。
その“誰かの手”は、ゆっくりと、でも確実に私の腰からお腹のあたりに移動する。
サッと血の気が引くのが分かった。
─────まさか、痴漢?
ジムへ向かうには電車を二回乗り換えるのだが、どの電車も凄まじい混雑具合。
乗り込むだけでもひと苦労の乗客がひしめく車内だ。
着替えなども持っていかねばならないため、荷物もいつもより多く、両手で抱えるようにしてなんとか乗り込む。
小太郎さんがあとから乗り込もうとしたものの、私がギリギリに乗ったからか一瞬困ったような顔をしたのが見えた。
その彼も、次々に乗り込んでくる他の乗客に埋もれて見えなくなってしまった。
─────でも、この電車に乗り遅れたら梨花と待ち合わせしているジムに間に合わない。
彼のことだから、一本乗り遅れたところでまたいつの間にか降車してしばらくしたら姿を現すだろう、とこの時の私は楽観的だった。
というか、彼とうまく離ればなれになったのは初めてかも?
なんていう考えさえよぎってしまい、申し訳ないながらも優越感を覚えてしまうほどだった。
あと二駅したら乗り換えだから、すぐといえばすぐなのだが。
乗り換える駅で彼を待つか…などと考えながらぎゅうぎゅうの車内で電車に揺られる。
両手で前に抱えたジム用の荷物と仕事用バッグを何度か握り直して、体勢を立て直していると、腰のあたりに違和感を覚えた。
「………?」
誰かの、手?
確認しようにも、乗客同士で押しつぶされていて、まったく見えない。
その“誰かの手”は、ゆっくりと、でも確実に私の腰からお腹のあたりに移動する。
サッと血の気が引くのが分かった。
─────まさか、痴漢?



