気合いを入れてお店へ出る。
と同時に、へなへなとその気合いがしおれた。

従業員の出入口すぐのところに、さっき会ったばかりの小太郎さんがいたからだ。
ほんの五分前に顔を見たばかりの彼と、また顔を合わせる。

なんか、もはや何かの罰ゲーム?

「そんなうんざりしたような顔しなくても」

「イラッシャイマセー」

彼の小さなつぶやきを遮るように、私は棒読みなセリフをかぶせて横を通過した。


「あ、マキさん!おはようございます」

「美羽ちゃん、おはよう」

マキさんに挨拶すると、早速彼女はテキパキと指示を出してくれた。

「今日とても納品多いの。裏に置いてあるから、ガンガン出しちゃって。昨日ミーティングでも話した通り、人気作は多めに積んでくれる?」

「分かりました!」


書店員は、じつはとてつもなく重労働なのである。
本屋さんといえば聞こえはいいが、その内情は非常に力仕事が多い。

なにせ、本って重い。
一冊は軽いけど、何冊も、何十冊も、となるととてつもなく重くなる。
それがダンボールに入っているのだから、持ち上げるだけでも大変なのだ。

私もマキさんも、もちろん男性である杉田さんも、何度腰をやられたことか。