マンションまでは、歩いて15分ほどだ。
けっこう長い間こうやって近い距離で歩かなきゃいけないの?
身動きがあまり取れない相傘に慣れないでいると、

「美羽さんは、やっぱりお父さんくらいの歳の人の方がよかった?」

と尋ねられて顔を上げた。

「え?」

「護衛されるの、本当はベテランの人の方がよかったんじゃない?」

問いかけの意図が分からず、そんなことは…と曖昧に答える。

「ただ、小太郎さん相手だと全然撒けないです」

「そう?生理的に受け付けないのかと」

「私、そんなに嫌そうにしてます?」

「うん」

うなずくと、彼は「ああ、ほら」と傘をさしていない方の手で手招きする。

「すぐ離れていくんだもん」

「これは違います!これは、その…」

なんか、めちゃくちゃ恥ずかしいんだもん!
距離が死ぬほど近くて!

とは言えず、仕方なく彼の肩になるべく近づくよう努力した。

そして気がつく。
彼は彼なりに、私に気をつかって傘をさしてくれていたらしい。傘の外に出ている肩が濡れていた。

「あっ、すみません。すごいそっち濡れちゃってる!」

「僕は全然どうでも。むしろこの傘を君に貸してもいいんだけど」

と言って、傘を私に押しつけようとしているのが分かり、それはそれで寂しくなってしまった。
なので、慌てて自分の体を無理やり彼の方へ押しやる。

「大丈夫!くっつけばいいんでしょ?くっつけば」

「美羽さん、なんかヤケクソ?そんなにくっついてこなくても」

「じゃあどうすれば!?」