「慎ましやか、なーんてお嬢様には縁遠い、思ったことが全部おもしろいくらいに顔に出る、元気で勇敢で正直でおもしろい子」

「ふふっ、なにそれ」

「最初の頃なんて、僕を撒くために心血注いでたよ。嘘ついてもぜーんぶ分かっちゃうの」

聞きながら、なるほどねぇと膝の上で頬杖をついた。

要するに、すべて手にとるように分かるような素直な子なのだ。
嘘をついてカフェオレを飲む私みたいな人じゃなく、彼に合わせずに好きなように自分の飲み物を選択する、そんな子。


しばしの沈黙のあと、ふと顔を上げる。

「……ねえ、“警視総監の娘”ってハードル高くない?」

私のこの言葉はどうやら彼の地雷だったらしい。
一瞬で三上くんの表情が曇った。

「分かってる。半殺しにされるくらいの覚悟はできてる」

「そんなに!?」

「次に出勤した時に松葉杖ついてたら察してね」


ふふふ、と笑いが止まらなかった。


フラれたっていうのに、今日やっと本当の彼を見れた気がして面白かった。
こういう会話を出会った時から素直にできていたら、未来は違ったのかもしれないが。




数年間秘めていた三上小太郎への私の想いは、この時をもって幕を閉じた。






*⑅︎୨୧┈︎┈︎おまけ おしまい┈︎┈︎୨୧⑅︎*