私に興味を示さないように、他人に興味を示さないように、誰かと深く関わらないようにしているみたいに、その場にうまく溶けこみ、ゆるりと流す。

そういう人間関係をあえて作っているのかと思っていた。
恋愛だけじゃなく、人間関係ぜんぶ。

そんなふうに彼のことを知ったつもりでいた自分がいかに愚かだったか、このとき思い知った。


「そういう錦戸さんは?恋人いないの?」

「好きな人はいたけど、たった今フラれた」

「────え!?」

これまで一ミリも私に興味を示してこなかった彼が、はっきりと初めて明確に感情をあらわにした瞬間だった。

…あぁ、本当に私って相手にされてなかったんだなぁ。

「それはなんだか……すみませんでした」

非常に申し訳なさそうに謝る三上くんに、私はやっとの思いでイスに座り直してこれみよがしにため息をついて見せた。

「なにがだめなんだろ。かわいげのなさ?」

「そ、そんなことないよ」

「うろたえないでよ!なんか図星っぽくて傷つく!」

「すみません」

平謝りする三上くんは、ちょっと新鮮だった。


「聞いてもいい?」
と、苦手な甘いカフェオレをひとくち飲んでから尋ねる。

「どんな子?警視総監の娘さんって。やっぱりお嬢様?大人しいの?儚くて、守ってあげたい感じ?」

「なに言ってるの、とんでもない!」

とんでもない?
思ってもみなかった返しに、逆に驚かされる。