「なんで?僕の彼女なんて、錦戸さんにはどうでもいいことなんじゃない?」

「深い意味はないよ!ただこうやって怪我してる三上くんに、お見舞いに来るような子はいるのかなぁーって」

またひとつ、嘘をついてしまった。
素直になれない自分をコントロールできない。


しかし『彼女なんていないよ』と言うであろうと予想していた答えは、彼からは出てこなかった。

「彼女になってくれたらいいなあって思ってる子は、いるよ」

「……えっ」

思わぬ言葉。

「全部終わるまで言わないでおいたけど、もう事件も片づいたしちゃんと伝えなきゃ」

「待って、誰?」

「え?」

半分身を乗り出し前のめりになって、彼に詰め寄る。
三上くんは、なんにも隠してなどいないようだ。

「警視総監の娘さん。でも錦戸さんは面識ないかあ」

「警護してただけじゃないの?」

「警護してたよ、ちゃんと真面目に。さすがにそこは線引きするよ」

「そういうことじゃなくてさ、」

じゃあどういうこと?と、取り乱している私を驚いた顔で見つめてくる。

「いや、だって、なんか…三上くんって…」

「僕って?」

答えを待つ彼は、もうきっと、私の知ってる三上くんではない。

「勝手に…恋愛なんて興味ないのかと思ってた」