私がお見舞いに行くということは伝えてあった。
大きな病院の整形外科の1063号室に、三上くんは入院しているようだ。

半分開いた扉をコンコンとノックすると、すぐに「どうぞ」と返事が聞こえた。

「おつかれ」

私が扉を引くと、窓際のベッドに彼はいつもと変わらない笑顔で手を振っていた。

「錦戸さん。なんだか久しぶりだね」

たぶん、彼はなにも考えていないのだろう。
警視総監の娘が誘拐されたあの現場で私がいたことも“その他大勢のひとり”、その認識のままなのだ。

「びっくりしたよ、まさか錦戸さんがお見舞いに来てくれるなんて」

「まあ…同期だしね?」

「そういえばそんなこと、前も言ってたね」

ベッド脇のイスに座る。

ちらりと彼の肩を見ると、しっかり処置されたあとで包帯が巻かれていた。
私の視線に気づいたのか、三上くんは苦笑した。

「たいそうな包帯じゃない?縫合も終わって痛みもほとんどないんだよ」

「縫うほどの傷は負ったわけでしょ?」

「まだあと一週間は入院生活だって言われた」

そうでしょうよ、まだ事件からほんの数日しか経っていないのだから。
驚異的な回復力だとしても、安静にしていなければならないはずだ。