二本目の煙草に火をつけたところで、喫煙所の扉が開いた。
ひょこっと三上くんが顔を出す。

「あ、錦戸さん。課長が呼んでるよ。急ぎだって」

「あー、分かったー。これ吸ったら行く」

「僕は伝えたよ。あとは知らないからね」

三上くんは非喫煙者なので、そう言ったあとサッと姿を消してしまった。

「急ぎだってよー愛佳」

わざとらしく強調してくる明那に、「分かってるよ」と言い返して仕方なくつけたばかりの煙草の火を消した。


足早に喫煙所を出ると、少し前を三上くんが歩いていた。

「三上くん」

「うん?」

「知ってた?私たち同期だって」

「知らない」

隣に並んだっていうのに、興味なさそうに彼は前を向いていた。

近藤くんの華やかさに紛れて、同時期に異動してきたことも忘れ去られているような、でも前々から捜査一課にいたような、不思議な存在感のある三上くん。

彼の放った何気ない「知らない」という言葉は、ちょっと胸に突き刺さるものがあった。
が、そんな素振りは見せないようにした。


三上くんはそのまま捜査一課の自分のデスクへ、私は課長のもとへとそれぞれわかれた。