私は警視庁捜査一課に所属する警部補の錦戸愛佳(まなか)。
三十一歳を迎え、仕事はとても大変だがいま頑張らなければ上には行けないことは分かっている。
いまだに女というだけで男性とはなにかと扱いが違うのも知っているからこそ、頑張りどきなのだ。
徹夜捜査は当たり前、家に帰らなくても平気、友達との時間も後回しにしてここまでやってきた。
そんな時、世田谷署から異動してきた三上小太郎と出会った。
彼は背が高いという特徴以外はこれといって特になかった。
人当たりがよく、彼を嫌だと言う人はいないだろう。
「ねぇ、この間異動してきたばっかりの近藤くんが気になってるの」
「えっ、どこがいいの?」
「そりゃあ、やっぱり顔?眼福モノだもん」
喫煙所で煙草を吸いながら、私の同期の明那(あきな)が当然のごとく息巻いた。
「あんなにかっこいい人がそばにいたら、たいていみんなこうなるでしょ!他の部署でも近藤くんの話で持ちきりだよ」
『近藤くん』とは、三上くんとほぼ同時期に同じく捜査一課に異動してきた若手の刑事だ。
誰が見ても端正な顔立ちだとひとは言うだろう。
容姿端麗に加えて高学歴!高身長!ご実家はどこだか有名企業の経営者!らしく、独身女性たちの視線を総ナメにした、警視庁の“時の人”である。
「いいなぁ、愛佳。同じ部署だから話すこともあるでしょ?」
「まあ、普通にね」
「歓迎会とかは?」
忙しくてそんな時間ないってば。と突っぱねると、ガッカリしていた。
「我々ももう三十一歳かぁ。うちら、男くさい中で頑張ってるほうだよね」
「私は恋愛は今はするつもりない」
「出た、愛佳のそういうとこ」
本当にそう思っているから言っているのだが、まあ明那が嘆くのも分からなくはない。
一応これでも、なんとなくではあるが「誰かに愛されたくなる」ような気分になることもある。
三十一歳を迎え、仕事はとても大変だがいま頑張らなければ上には行けないことは分かっている。
いまだに女というだけで男性とはなにかと扱いが違うのも知っているからこそ、頑張りどきなのだ。
徹夜捜査は当たり前、家に帰らなくても平気、友達との時間も後回しにしてここまでやってきた。
そんな時、世田谷署から異動してきた三上小太郎と出会った。
彼は背が高いという特徴以外はこれといって特になかった。
人当たりがよく、彼を嫌だと言う人はいないだろう。
「ねぇ、この間異動してきたばっかりの近藤くんが気になってるの」
「えっ、どこがいいの?」
「そりゃあ、やっぱり顔?眼福モノだもん」
喫煙所で煙草を吸いながら、私の同期の明那(あきな)が当然のごとく息巻いた。
「あんなにかっこいい人がそばにいたら、たいていみんなこうなるでしょ!他の部署でも近藤くんの話で持ちきりだよ」
『近藤くん』とは、三上くんとほぼ同時期に同じく捜査一課に異動してきた若手の刑事だ。
誰が見ても端正な顔立ちだとひとは言うだろう。
容姿端麗に加えて高学歴!高身長!ご実家はどこだか有名企業の経営者!らしく、独身女性たちの視線を総ナメにした、警視庁の“時の人”である。
「いいなぁ、愛佳。同じ部署だから話すこともあるでしょ?」
「まあ、普通にね」
「歓迎会とかは?」
忙しくてそんな時間ないってば。と突っぱねると、ガッカリしていた。
「我々ももう三十一歳かぁ。うちら、男くさい中で頑張ってるほうだよね」
「私は恋愛は今はするつもりない」
「出た、愛佳のそういうとこ」
本当にそう思っているから言っているのだが、まあ明那が嘆くのも分からなくはない。
一応これでも、なんとなくではあるが「誰かに愛されたくなる」ような気分になることもある。



