「手、繋いでみる?」

マンションまで送ってくれるという彼に甘えて一緒に帰り道を歩いていたら、ふと小太郎さんに手を差し出される。

ギュンッと勢いよく振り向くと、彼は声を上げて笑った。
もしかして、私の言動は鬼塚さんとそう変わりないのでは?と思ってしまった。

なるほど、恋人になるとこうして手を繋ぐことも当たり前にするのか。
別に意識するでもなく、ごく自然に。


差し伸べられた手に、そっと手を重ねるとぎゅっと握られ、そしてすぐ離されたと思ったら指と指を絡められていった。

「これが恋人つなぎ」

取扱説明書のように言われて、他人がそうしているのを見たことしかない私にはなかなか刺激的だった。
どうかこのドキドキが手のひらを伝って彼に知られませんように。

「…小太郎さん」

「うん」

「私たち、久しぶりに会いますよね」

「そうだね。忙しすぎてなかなか時間も作れなくてごめん」

「それは覚悟していたんです。…していたんですが」

私の様子があまりにおかしいからか、彼は自分がなにかやってしまったのかと戸惑いの目で私を見つめてくる。

「久しぶりなのに、お手柔らかにしてあげようとか思わないんですか?」

「えーっ、愛情表現の話?」