「すごい。そのツネさんって何者なの?」

「お父さんと同期の刑事さん」

「最初からツネさんに頼めばよかったのかもねー」

我が家のことをよく知る梨花でさえ感心するほどの、ツネさんの口撃は父にだいぶ大ダメージを与えたようだった。

SPはつけない替わりに「三日に一回は電話がほしいなぁ~。美羽の声が聞きたいなぁ~」と懇願にも聞こえるほどの声で父がぼやいていたが、私は完全無視。

あれからへこんでしまったであろう父からは、一方的にメッセージが送られてくるので、気が向いた時にスタンプを返したりしていた。


今も私のスマホには父からタイムリーに
『いま何してる?』
と、片想いの中学生みたいなメッセージが届いている。

もう食べ終わった空のガパオライスのお皿をカメラにおさめ、それを送りつけておいた。


「ていうか、ふーん。三上さんってキャリア組なんだー。エリートってわけねー」

話をかいつまんだつもりだったが、梨花が食いついたのはそこだった。

「私も初めて知ったんだよ」

「ふーん。ふーん。どう考えても超優良物件だよね。美羽ってばどれだけ贅沢するの?」

妬み嫉みを一切隠さない私の親友は、なかなか手強い。
頬杖をついて深い長いため息をついていた。

「ついこの間までどうしよう、どうしよう、なーんて悩んでたのにね?」

「それはね!梨花にアドバイスもらって、なんとか私なりに頑張ったりもしたんだよ!そこは信じてよ!」

「じゃあ見返りがほしい!ギブアンドテイク!」


そこまで話して、背後からドアの開く音と“カランコロン”という可愛い音色が響いた。

「いらっしゃいませー!………あら!」

由花子さんがすぐに反応し、無邪気な笑顔で視線の先にいるひとに手を振った。

小太郎さんだった。