たしかに、小学生の頃から普通にこうしてツネさんみたいに父と同じ年代の警護してくれる人がついてくれていた。
過保護だと思っていたし、周囲からも思われていたに違いない。

だが────

「こうやって美羽ちゃんに話したってことは、公生くんには絶対に言わないでほしいんだが…」

「言いません」

「じつは、君には昔から何度か、今回のように魔の手が伸びていたことがあったんだよ」

「魔の手?」

「殺人予告や、誘拐予告みたいな」

ツネさんの話は、驚くべき事実だった。


「公生くんは、キャリアもあって実力も実績もあった。世間を騒がせるような難事件をいくつも解決してきた。出世街道まっしぐらだった」

私が生まれた頃から父の仕事が忙しくなり、家を空けることも多かったのは知っていたが、両親からは仕事が忙しいとしか聞いてこなかった。
どんな事件があったとか、そんなことを父も家では一切言わないし、母も聞き出すこともなかった。

けれどまさか、昔から私が犯罪者に狙われていたとは夢にも思っていなかった。

「そういう情報も、犯罪組織にはどういうわけか漏れていくんだな。公生くんだけじゃなかったが、やはりエリートコースを進んでいく人間の家族は犯罪者に狙われやすかったりする」

「そう…だったんですね」

それであの過保護っぷり。なんなら私はひとりっ子。
父はこれでもかというほど私を溺愛していたし、何かあってからでは遅いと思ってそばにSPをつけていたのか。

「疑問に思っていただろうから、話したくてね。美羽ちゃんの見えないところで、しっかり未然に防いだことももちろん何度かあって」

「そっか、私…ひとりになりたいとか、自由になりたいとか、そんなことばっか考えちゃってました」

自分のことしか考えていなかったんだという申し訳なさ。そして必死に守ろうとしてくれていた人たちを、撒こうとして逃げ回ったりもしていた愚かな過去の思い出たちを振り返る。
あぁ、なんて手のかかる厄介な娘だったんだ。

若かりし頃の、とにかく逃げることしか考えていなかった自分を思い出しては恥ずかしくなるばかりだ。