「ご無沙汰してます、ツネさん」

待ち合わせの場所で、そこに馴染むように立っていた懐かしい顔の年配男性に声をかける。
振り向いた男性は、恒松浩さん。

キャリア組の父と同期のノンキャリアのツネさん。
立場は違えど気が合ったのか二人は昔から仲が良く、私も子供の頃からよく知っている。
すでに社会人として巣立っているが息子さんが二人いて、娘がいないから女の子はいいなぁと可愛がってもらっていた。

ツネさんがこの歳になって警視庁捜査一課に配属になり、そこから忙しくなってしまいなかなか会えていなかった。

ベテラン特有のドンと来い感はありつつも、どんな人とも平等に接してくれる余裕や話しやすさも彼のいいところだ。
まるで、小太郎さんのような────。

「本当に久しぶりだねぇ、美羽ちゃん」

目を細めて嬉しそうに笑ったツネさんに、笑顔を返した。

彼のもとで働いていたから、小太郎さんもおのずとツネさんのように話しやすく、どんな人もすんなりと受け入れるような雰囲気があったのか。
ここで合点がいった。


「行こうか」という彼の言葉で二人で歩き出す。

「美羽ちゃんにそんな怪我を負わせたくなかったよ。申し訳なかったね」

秋を思わせる涼しい風がそよそよ吹く中、片手で髪の毛を押さえながら首を振った。

「いいんです」

「君には物心ついた頃からSPがいただろ?」

「はい」