幸いにも、私の怪我はたいしたことはなかった。
生まれて初めてボディーブローや蹴りを何度も受け、ビンタも何回されたか分からないほどされたものの、ひどい打撲くらいで済んだ。

入院生活は一週間ほど。
父のはからいで個室を準備してもらい、処置も的確に施してもらって治りも順調だった。


「やっと退院ね」

毎日のようにお見舞いに来てくれていた母が、安心したように入院中に使っていた小物などの整理を手伝ってくれている。
さすがに父は仕事があるのでお見舞いには来なかったので、内心、あの騒がしい声を聞かずに心は落ち着いていた。

いや、もちろん父が大きすぎる愛情で私を心配してくれているのは大前提ではあるのだが。

母は大きなショルダーバッグに荷物を詰め込んだあと、服で見えない私のお腹をそっとさすってきた。

「顔の傷も少しずつ消えていくとは思うけど…。お腹の痣はどう?」

「まだすごいことになってるけど、まあ大丈夫だよ」

「身体中、痣だらけなんでしょう?」

「仕方ないよ」


なにしろあちこち地面だのコンテナだの、叩きつけられたのだ。これで無傷な方がおかしい。

お腹だけではない、背中も腕も、痣だらけだが骨が折れたりすることもなく打撲だったからまだいいと思うようにした。