相当な人数の反社会的勢力の人間たちが、今夜逮捕されただろう。
音もなく現れた警察官たちの能力も素晴らしいが、ここまで連携をとっている組織力の高さに驚いた。


私がぼんやりと座り込んで眺めていると、急いだ様子で小太郎さんがこちらへ走ってくるのが見えて、とんでもない速度で心臓が鳴り出すのが分かった。

公衆…いや警察官たちの面前で彼のことを「大好きなひと」と言ってしまったんだと思うと、もはや穴に入るとかじゃなく、どこからも見えないようになにかにうずもれたい。

「美羽さん!だいじょ」

「美羽ーーーーーーーーーーーー!!!」

小太郎さんの身体を押しのけ、なんなら私を控えめに支えてくれていた鬼塚さんさえも押しのけ、ブルドーザーみたいに私の名前を叫んで駆けつけてきたのは─────警視総監である、父だった。


ガクッ。と心が折れそうになる。

「美羽!美羽!ごめんなぁ、ごめんなぁ」

「いたたたたたっ」

人目もはばからず抱きしめてくる父に呆れ果てる。

「俺がいの一番に来るつもりだったんだけど、犯人グループをまるっと逮捕するまでまだ行かない方がいいよねっていろんな人に言われて!遅くなったぁ!ごめんなぁ、ごめんなぁ」

「お父さん…。みんな見てるよ…」

「お前が無事でよかったぁーーー」


父の肩越しに、小太郎さんが穏やかに微笑んでいる姿があった。


しかし、すぐに私は父の腕をつかんだ。

「お父さん!どいて!」

「え!?」

目を丸くして、しかしまったく私から離れようとしない父に、じたばたして背中を叩く。

「小太郎さんの肩!」


人を指さしてはいけない、なんて言われているけれど、今はそれどころではなかった。

たぶん私に言われるまで本人も気づいていなかったであろう、肩に切り傷があった。

「あれぇ、刺されてた」

と、小太郎さんも自分で驚いた顔をしている。
着用している防弾チョッキでは覆われていない左肩から流血していた。


ちょうど遠くの方から救急車の音が聞こえてきた。

「何台か手配してあるから、美羽はすぐに乗りなさい」

父は私にそう言い聞かせ、そして後ろに立つ小太郎さんの顔は見ずに、

「三上くんも救急車へ。─────絶対に美羽とは違うのに乗ってね。一緒はダメ」

と言うのだった。


父に殺意が湧いてしまったのは言うまでもない。