「美羽さんの愛の告白は、こんな時に聞きたくなかったな」


ハッキリとした、聞いたことのない怒りに満ちた灼熱みたいな温度の声色。
でも、この声の主は分かる。顔を見なくても。
一気に目も覚めた。

まさにずっと通話状態にしていた相手だ。


私の身体がふわりと明らかにこれまでと違う扱い方で優しく抱かれた。
うまく身体が動かせなくて、震えてしまう。

「遅れてごめんね」

上から降るあたたかい声に、うなずいた。
こらえていた涙がこぼれる。
その涙をそっと彼の指が撫でて拭い取られた。

そして、やっと顔が見えた。
久しぶりに見る小太郎さんが、何倍も、何十倍も何千倍もかっこよく見えた。この世で一番。


彼はヒーローみたいだ。


「……はぁ?おいっ、どうやってここに来たんだ」

チンピラ一号が食ってかかるが、小太郎さんは目にも止まらぬ速さでスラックスの裾から拳銃を取り出し、悠月に銃口を向けていた。

「動いたらこの男をいつでも撃ち殺す」


唖然とする男たちを尻目に、気がつけばぞろぞろと警官たちがこの場に集結し始めていた。

「日本の警察をなめてもらっちゃ困るね」

どこかで聞いたことがある懐かしい声。
ツネさんだ─────!

「あんたらの考えそうなことは全部先回りして押さえさせてもらってるからね」

視界の端でツネさんが得意げに後ろに若い部下たちを従えて微笑んでいる。