「勘違いするなよ、いつでもお前なんて殺せるんだからな。父親の目の前でなぶり殺すのも楽しそうだ」

彼は私のジャケットをつかむと、そのまま胸ぐらを引くように顔を近づけてきた。

「このあたり一帯に、俺の部下をありったけ散りばめてある」

「……だからなに?」

「飛び道具も持たせてある」

まさか、銃も持っているの?
もしかしたら、この男たちは反社会的勢力の人間たちなのかもしれない。

「日本の警察は無能だってことを、思い知らせてやる。お前をそれに利用してやる」


ぐいっと強い力で身体をジャケットごと引き上げられ、虫でも払うみたいに私を地面に転がした。
かたい地面に頭を打ち、もうあちこち痛くて抵抗もできなかった。

地面に転がされたと同時にぽとり、とジャケットから私のスマホが落ちる。

また意識が飛びそうになっている私の耳に、少し焦ったような声だけが聞こえた。


「…ん?あれっ?悠月さん!!」

「なんだ?」

「こいつのスマホ、ずっと通話中になってます!」


────あぁ、気づかれちゃった。