なるべく顔に感情を出さないようにしたつもりだったけれど、さすがにこの時だけは無理だった。

「目の色が変わったな」

私の目の前にいるこの男は、何者なのだろう。
余裕のある憎たらしい表情も作戦のひとつなのだろうか。

「だいぶ前に殺害予告を送ったっていうのに、なんでお前は普通に生活していたんだろうな?」

「なに言ってんの、あんた?」

「クソ女、口の利き方に気をつけろ!どんな教育受けてんだよ!」

ぐいっとまた別な男に髪を引っ張られ、こんな時に後悔する。
髪の毛なんて、切ってしまえばよかった。
長くしていてもこんなことをされるくらいなら、もうどうだっていい。

「うるさい!下っ端は黙ってなさいよ!」

「あははははは、おもしろいなあ。離してやれ」


鶴の一声といったところか、名前が二つあるこの男の言葉で、私の身体は乱暴に床に叩きつけられた。

なんとか上半身だけでも自力で起こすと、そこへ彼がしゃがみ込んで楽しげに上から下まで舐め回すみたいに眺める。

────気持ち悪い。
目を背けたいが、負けるもんかと睨んだ。

「ボロボロだなあ」

「もういっそ殺したら?どうせ数え切れないくらい殺してるんでしょ?」

「殺しちゃったら金がもらえないだろう?それに、交換条件もある」

お前を殺すのはすべて終わったあとだ、と付け加えた。