ケタケタ笑う男たちに文句を言ってやりたいところだったが、お腹の痛みで声が出せなかった。

泣くな、今ここでまた泣いたら、こいつらの思うツボだ。しっかりしろ。
言い聞かせて、唇を噛んだ。
頬を叩かれたせいか、口の中が切れて血の味がする。


「─────目を覚ましたのか?」

コンコン、という何かを手の甲で叩く音がして、風見さんが姿を現した。もう彼はメガネはかけていない。
即座にだんご三兄弟が姿勢を正す。

なるほど、彼はだんご三兄弟の先輩か、もしくはボスみたいなものなんだな。


周りを見る余裕がなかったのだが、辺りにはコンテナのようなものがたくさん並んでいた。
貨物置場のような、なにかのターミナルのような、倉庫のような。
屋根はあれど、古びた窓ガラスは割れていてその役目を果たしていない。

すっかり日も暮れて闇に包まれている。
私は今いったいどこに連れてこられたのか。
意識がなかったので、どのくらいの時間をかけてここまで来たのかさえ分からなかった。


「悠月さん、この女マジでムカつくんですよ」

チンピラの一人が告げ口するみたいにごますりをする。
ますますバカらしい構図だ。

ユヅキ、という私が聞いたものとは違う名前で呼ばれた風見さんが、腕を組んで面白そうに肩を震わせる。

「酷いもんだな、鏡で顔を見てみるか?」

「けっこうです」

「お前の父親に、身代金を要求した。ほかにも、交換条件もつけた」