目の前に、さっき助けてくれた人がいた。
とてもとても困ったように、眉尻を下げて微笑んでいる。
「何かが起こる前で、本当によかった」
彼はそう言って着ていた黒いパーカーを脱ぐと、私の肩にかけてくれた。
まだ彼の温もりが残るその服の端っこを、きゅっと両手で握りしめる。
「とりあえず片づけてくるから、ここで待っててね」
扉を開いて、戦場と化したあそこへ向かう彼の腰には、ぎらりとしたアレが黒光りして見えた。
……拳銃。本物を見たのは、たぶん初めて。
呆気に取られているうちに、彼はいなくなってしまった。
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