それからは、あまり記憶がなく、ただぼうっとしていたと思う。

「……ード、ドリード、マドリード!!」

「は、はいぃぃ!!!」

「どうしたのよ。ぼけっとして。どっかおかしくなったんじゃないの?」

私を眺めて、心配してくれる友達のミーア。ふわっとしたボブの髪に、本人は気にしているけど、涙袋がある所もとても好き。私の相談にのってくれる、一番目にできたお友達。

「うん、私、おかしくなったかも。王様にお会いできたの。」

「えええ!!凄い!!いいなあ。羨ましい。私も会いたい。それで!?どうだった??イケメンだった??」

「うん。私、一瞬で好きになっちゃった。」

ぽおっと何処か遠くを眺めていると、まるで恋する乙女だなあと思う。
二人でキャッキャと盛り上がって話していたけれど、
「でも王様だと叶わない恋よね。マドリード、本気で好きになったらダメよ!」

「きっともう会うこともないだろうし、好きにならないよ。」
否定しながらも、胸がずきっと痛んだ。

だけど、その痛みの正体は自分でもよくわからなかった。