「すみません!遅くなりました!!!」

カトリーヌ様の所に向かうと、そこには身長の高い、美麗な男性がいた。

この世の物とは思えないほどに整った顔立ち。色白で、身体つきは逞しく、筋肉がついていて、喉仏がくっきりと出ている。すらりとした立ち姿に、紳士のような優しさが溢れている。ライトブラウンの瞳に、揺れる艶のある髪。 いかにも品質の良い高級な品だと分かる衣服。

はっ!!見とれている場合ではないのに!!

「し、失礼しました!!」

「ははっ。格好良くてみとれちゃった??」

カトリーヌ様にずばっと本音を当てられて、顔が真っ赤になる。いたたまれないでいると、

「母上。そのように意地悪しては可哀想ですよ。」

と、ふふっと笑う青年。

ん?母上??と首を傾げていると、
「マドリード、この子は私の息子よ。」

………………むすこ、息子、息子、、って

「ぇえええええ!!!」

「ふっ。そんなに驚くことではないでしょうに。そういえば、マドリードが会うのは初めてよね。」

そうなのだ。勤めて三年の私はまだ王様にお会いしたことがなかったのだ。働いているといっても、これ早々と王様に会える訳でもなく、カトリーヌ様にお会いできただけでも滅多にないことなのだ。

王様を知っているのは恐らく、宮殿を仕切るラーディンや、王族騎士、親戚の方等王様のお近くにいる方のみだろう。

いや、まさか王様に会えるなんて。
ぼうっとしていると、
「大丈夫?マドリード??」と、声を掛けられて、一気に目が覚めた。

麗しいほどの青年が近寄ってきて、
「私はヴァンデール国王、ヴィンテッド=ロレーヌ=ド=ローランだ。母上を宜しく頼む。」

瞬殺するような天使の笑みを向けられて、不意に心臓がとまってしまいそうになった。

「はい。勿論です。死ぬまでお仕えします。」

「ははっ。それは有難いな。だけど、長生きしてくれよ。」

颯爽と手を振って去っていかれるお姿はなんと美しいことか。

その魅力に一瞬で骨抜きにされ、私は一目惚れをしてしまった。