彩香は今更ながら驚いた。この三週間ほど無我夢中でやって来たのだ。ふと我に帰り、自分がここまで来れたことに気が付いたのだ。
「よかった。次のシリーズの企画をしている最中なの。計画が固まって来たらまた連絡するから。よろしくね」
 会話を終えた後しばらくの間、彩香は携帯を見つめていた。ほんの少し前までは思いもしなかったことが現実になったのだ。そう思うとじわじわと喜びが込み上げてきた。
 書面で契約を交わした通り、その次の月の初めに彩香は銀行振込で15万円を受け取った。通帳記入してその数字を見ると、改めてひと仕事したという実感を味わった。