その手に持つ棒付きの飴がなんともアンバランスな、しかしそれでいて雰囲気に似合うような、まるで人形のようなその少女は首を傾げた…かのように見えた。
小さな小さなその動きは、ちょっと瞬きをしただけでも見失ってしまいそうなほど。

誰だろう、という疑問を持っている。そう推測した優夜は「あぁ、ごめんな」と声をかけた。

「俺は藤田優夜。やさしいよる、と書いてゆうやって読むんだぜ。最近こっちに引越してきたんだ。よろしく」

そう言葉にすると少女はちょっと目を見開いたようだった。
分かりづらいが、なんだかそんな気がした。優夜はにこっと笑って見せた。

「…なんで、分かったの」

「ん?」

「私が思ってたことでも読んだの」

「まさか。ただなんとなくそうじゃねえかなって思っただけ」

少女はどうも表情が変わらなくて、掴めない子だなぁと思った。でも、なんとなく。そう、本当になんとなくだったのは確かだった。