ハルは、そんな話をしている間も穏やかな顔をしていた。

優夜は黙り込む。何を言えばいいのか、分からなかったのだ。

「…今よりも前、この村には医院が存在せず、お医者様に見て貰う為には車を1時間走らせるか、バスを待たなくてはならなかったの。そのバスの本数だって、藤田くんの住んでいた街に比べればずっと少ないし。
私は、私の生まれたこの村の役に立ちたかった。だから、医者になってこの村に医院を建てることにしたの」

そんな優夜の顔を見た彼女は、不意にそう語り始めた。

彼女は、村人たちからの寄付と、働いて稼いだお金で医院を建てたらしい。その医院を建てるときだって、村の大工や男たちがこぞって建てるのを手伝ってくれたという。
少ない資金で建てた医院はこの村に似合った温かな建物だ、とハルは自慢げに話す。