自分はそうやって深呼吸をしているというのに、まるで息が詰まるようだ。

こんなにも美しい景色なぞ、写真集やテレビの中のものだけだと思っていたけれど、まさか自分がこういう景色を目の当たりにすることになろうとは。
優夜が感嘆しているその間にも、ましろは池のほうへと向かっていた。

「ゆう、こっちに来て」

優夜はその声に吸い寄せられるようにそちらへ近づいた。彼女はそんな優夜にふわりと微笑んでから、そこの草をかき分けた。
そして手に持っていた大きめのタオルをばさりとかけて、座ってよ、と彼女は促す。優夜がそこに座ると、彼女もその横に座り込んだ。
ぱらり、と細い髪の毛が揺れて、シャンプーの匂いがする。なぜかそれが照れくさくて、ふいと顔を背けたくなった。

そうしながら、そのタオル、汗ふき用のじゃなかったのか、と優夜はぼんやりと思う。直に座っても問題はないと思ったが、よくよく考えてみれば草だらけのここでは虫や草につくつゆがすごい。座ったらズボンが無事ではすまなかっただろう。