がさがさと草をかき分けたりして進んでいるのを見ると、迷いの森という名は確かにその通りなのかもしれないと思った。
道というべきものは何一つなく、木や草ばかりで目印すらない。確かこういうときは木の枝を折って目印にするんだったか…と思いつつ、目の前の少女を追いかけていく。

枝に顔をつつかれ、草に足をくすぐられる。それでもその緑はとても美しく、うっそうと生い茂ってるわりにはどこか整っているようで。

虫の鳴く声が聞こえる。何の虫なのかはわからないが、優夜はその虫の歌う歌にそっと耳を澄ます。優しくて、綺麗な声だった。
都会の喧噪とはほど遠い、自然の音だ。そう考えると、草木をかき分ける音すら虫の音の歌の一部のような気さえした。
とても、居心地が良い。