彼女は不思議だ。
のらりくらりとしているようで、実はこうと決めたら頑固でわがままだったりする。
ふらふらとしているかと思えば、じっと前を見据えてまっすぐだったり。手を離してしまえばふっと消えてしまいそうな、離れたら2度と触れられないような、そんな感じでさえあって。
優夜は、そういう意味でもましろを放っておけなかったのだ。妹のような存在だから、それを許せなかったのだろうかと思っていたけれど、どうやらそうとも限らないらしい。
だって、なんとなくだが、彼女がいなくなるのなんか想像したくなかった。
「こっちこっち!早く行こう、ゆう!」
彼女の声音は随分と落ち着く優しい色をしている。彼女の声が自分の名前を紡ぐのが、優夜は好きだった。彼女の隣が落ち着くのは、そのせいなのだろうか。それとも。
「待てよましろ!」


