私は、周りを確認しながら、マンションの廊下をゆっくり歩いていた。
私の部屋は202、玲於の部屋は203

とりあえずまだ帰宅はしていないだろうから、安心だ。


街灯がグレーのマンションの外観を重々しく照らしている。

その重みを跳ね返すように、私は家の扉を開けた。


「はい、どうぞ…狭いけど」

間取りは1LDK、築3年なため、比較的綺麗ではある。


「お邪魔します…へぇー女の子の部屋だねぇー綺麗にしてるね」


ピンクで統一された部屋はたまに人に言うと馬鹿にされるが、翼は褒めてくれた。


「やっぱピンク好きなんだね…奏音らしいよ」柔らかに微笑む。


「ありがとう。あ、なんか作るね。何食べたい?」
私は翼の前で背伸びをして聞いた。


「あはは、可愛いな。何でも食べるよ。奏音が作ってくれるなら…」
端正な顔立ちが一段と引き立って見えた。


「うん。わかった…ゆっくりしてて」