桜の花はすっかり散ってしまい、街並みは葉桜と変化していた。風が吹くと花びらがちらちらと舞い降りる。あっという間に季節は移り変わって行く。



「里穂、今日はどうする?」
里穂は私のネイルサロンに来ていた。

「うん。初夏のイメージで、フレンチネイルにするわ」

「そうだね。この色、新色なんだけどどう?」淡いけど鮮やかな緑色を私は勧めた。


「あ、いいね。それでお願い」
里穂は美しい瞳で、私を悩殺する。


「それより、聞いてよ、奏音」
声を荒あげて、机を拳で叩く里穂。


「ど、どうしたの?」
私はボールのように目を丸くする。


「玲於のやつ、絶対浮気してる。最近、家に私を連れて行ってくれない」
里穂はかなり強く確信している。


「ま、前はよく家行ってたの?」


「うん。よくお泊まりしてたよ。絶対おかしくない?」

私は胸に何か鋭いものが突き刺さった。


「き、気のせいじゃない?玲於君、里穂にラブラブだったし…」

正直、なんて答えたら良いかわからない。


「奏音、信じたいけど、やっぱおかしいもん。なんかよそよそしいし、ずっとキスもしてない」


キ、キス?
えぇー?
してないの?

玲於のバカ、バレるよ……
そりゃ、おかしいよ。