ロビーに行くと、心配そうに翼が私をあちこち探していた。


「翼!」

「あれ、里穂ちゃん。奏音いたか、良かった…」
翼は胸を撫で下ろす。


「なんかあった?奏音、元気ないみたいだけどー」
里穂が優しく聞いてくれた。


「慣れない場所で、疲れたんだろ。大丈夫か?帰るか?」
里穂がいるからか、妙に温かく優しく言う翼。


「わ、私、1人で帰ります」
そう言って、私は2人に背中を向けた。


「おい、待て」
翼が慌てて声をかけた。




しかし、「国木田君、ちょっとこっち」
翼を呼び出す大きな声。


「里穂さん、こちらへどうぞ」
里穂を呼び出す大きな声。


2人は結局私を止めることが出来なかった。



私は、たった1人、プラトンホテルからタクシーに乗り、帰路についた。