私が途方に暮れていると、翼は、
「じゃあ、俺が奏音の好きなもの3つ当てたら、付き合う。外したら、この話はなかったことにしよう」
と、変な提案をしてきた。
「いいね、奏音。これは断ったら失礼よ」
里穂は、姉御口調で言う。
「……は、はい」
私は首を横に振るのを我慢して、仕方なくその提案に応じた。
私の好きなものなんてわかるのかな?
だから、大丈夫だよね。
「よし、翼頑張れ!」
玲於が、後ろから大声をあげる。なんだか、荒々しくてモデルのイメージが崩れかけていく。
「じゃあな、まず一つ目は、焼き肉」
ま、まずい。
誰でもが好きそうなもので攻めてくるの?
「…はい、好きです」
「よし。じゃあ、二つ目は、ピンク色」
わぁー私の服、バッグ見れば一目瞭然。
しまったー
これだと当たってしまう。
「……はい、好きです」
激しく動揺する私。
「リーチだ。翼、頑張って」
里穂が必死で応援する。
「ちょっと、里穂ってば、ダメダメ」
私は、今度は思いっきり首を横に振った。
翼は、ハンドルを華麗に操りながら、余裕の笑みを見せる。
「奏音、俺と付き合ったら、楽しいことばかりだよ。そんな顔しないで」
無理…無理だよ
あーん、どうしよう?
「じゃあ、最後ね、好きなものは、紅茶。さっき飲んでただろ?コーヒー飲めないんじゃない?」
「あははは、流石ね、よく見てる。正解、奏音は、コーヒー飲めないんだよ」
私より、先に親友の恋愛にワクワクしている里穂が答えた。
私は、どんな質問が来ても、否定するつもりでいたから、里穂のバカって心の中で、大きく叫んだ。
「よっしゃーこれで決まりだね」
翼は黒い眼鏡をかけ直し、カッコよく私に言った。
「カップル成立だな。おめでとう」
玲於が妙に爽やかに言ってきた。
私は言葉が出ない……
「わかった?奏音」
里穂が、後ろから私を強く揺さぶる。
こんなイケメンと私付き合うの?
まぁ、振られるのも時間の問題だよね。
なるべく本気にならないようにしよう。
「……あ、よろしくお願いします」