聞き取れず、もう一度聞き返すと。

「・・・恥ずかしいから、こっち見ないで」

ひろ君が、口元を覆いながら小さく言った。

可愛い。

その姿が可愛くて、自然と笑ってしまった。
私を見て、ひろ君が真顔になる。

そっとひろ君の手が伸びてきて、私の頰に触れた。
視線がぶつかって、それを合図のように、私はゆっくり目を閉じる。

そっと触れる、優しいキス。

目を開けると、ひろ君がゆっくり私を抱きしめてくれた。

「ありがとう。大事にする」

それは、まるで何か誓いのような力強さで。
私はひろ君に包まれながら、幸せを噛み締めた。

だから、忘れていたんだ。
ジュエリーショップから、白石さんと一緒に出てきた事をーーー。