その日がやって来た。
川崎さんのお家でホームパーティーだ。

私が電車で川崎さん宅の最寄り駅まで行き、
近くのスーパーでちょっとしたおつまみを買った後、
大宮課長が迎えに来てくれる、という
何とも信じがたいスケジュールになっていた。
あの大宮課長が、迎えに来てくれるなんて!

レジ袋を両手に下げ、
スーパーの駐車場で待っていると
見たことのないロゴの車が私の前で止まった。
助手席の窓が開いたので覗き込むと、
大宮課長が「よっ」と言った。
濃い青のセーターを着ている。
私のお父さんが同じのを着たら、
きっとものすごくダサく見えそうなセーターなのに、
課長が着ると、有名ブランドの商品に見える。
いや、実際有名ブランドの物かもしれない。

課長は、車から降りて、後ろのドアを開けた。
あらやだ、わざわざ私のためにドアを開けてくれるの?
なんて紳士なんだ!と思ったら、
私の手から二つのレジ袋を受け取り、
後部座席の足元に置くと、ドアをバタンと閉めた。
なるほど、私は助手席に乗ればいいのね。
と、いっても、彼が「乗れよ」と言う前に乗り込むのは
失礼だと思い、そのまま突っ立っていると、
課長はまた運転席に戻り、「じゃ、川崎ん家で」と
手を振るとそのまま発車したのだった。

私の思考は一時停止した。
ん…?
え…?
えええ?
「ちょっと、課長―?!!」