足がガクガク震えて立っているのが精一杯。


もしかして、これが"ちょっとた発表"? これから結婚をするって報告じゃなく、いきなり結婚式を挙げるってこと? 


会社にとって大切な設立パーティーと、もろプライベートな結婚式を一緒にするなんて、そんな非常識なこと普通では有り得ない。でも、この状況では、それ以外考えられない。


そこまで話しが進んでいたことにショックを受けるが、それ以上にショックだったのは、愁が私の目の前で他の女性と結婚式を挙げようとしているってことだ。


愁がここまで無神経で残酷な人だとは思わなかった……


悲しさを通り越して沸々と怒りが込み上げてくる。そしてなぜ私がこんな辛い想いをしてまでここに居る必要があるんだろうと疑問に思えてきた。


愁の将来の為だと思って清く身を引いたのに、もうどうでもいいや……


「すみません……私、帰ります」


愁が他の女性と幸せになるところなんて見たくもない。


「はぁ? 帰るって……新田さん、何言ってるの?」


珍しく取り乱している根本課長に丁重に頭を下げ、控室を出ようとした時、ノックの音が聞こえドアが開く。


控室に入ってきたのは、なぜか早紀さんとウエディングドレスデザイナーの瀬戸さんだった。ふたりは「おめでとう!」と叫ぶと満面の笑みで私をハグする。けれど、完全にブチ切れていた私はふたりを力一杯、押し退けた。


「何がめでたいの? めでたいことなんてひとつもないわよ!」


すると瀬戸さんが毒づく私の背中を擦り、自分もそうだったからその気持ちはよく分かると同情の眼差しを向ける。