早く新しい恋をしたいと強く思いつつ、祐之介しかありえないと思って書いたあの頃の素直な自分の気持ち。


大人になってしまった私には可愛くて仕方ない。

口角が上がって手紙に微笑む。



やっと笑えたよ。


「さて…笑った事だし、じゃあこれも入れて、また閉じるか」


新たな【38歳の杏へ】と書かれた封筒をタイムカプセルに入れてガムテープで蓋を閉じる。

そして掘った穴にまたソッと缶を入れ土で埋める。


「また10年後か…」


大きく伸びをして空を見上げる。

空は澄みきった青い色が広がっていた。



もうあの頃の様に可愛く純粋な気持ちだけで1人の人を想い続けることはできないけれど、

10年毎にこのタイムカプセルを開いて忘れていたあの頃の気持ちを思い出して、

また新たな一歩を歩き続けられたらいいな。


「10年後は結婚してたらいいな…」


青い空に小さく拝んだ。