「この時はまだ自分のこと“杏”て呼んでたんだよねぇ…お子ちゃまだなぁ」


28歳の今、『杏ね、』なんて恥ずかしくて言えないよ。

今考えても良く言えてたものだ、恥ずかしさが一周回って笑いが出る。


「それにしても…祐之介も若いなぁ」


写真でも分かるくらい初々しさが滲み出ている。

この時はまだ身長も手の大きさも私より少し大きいくらいで頼りない部分もあったんだよね…。

だけど、不安なんて一切無くて、寧ろ安心しかなかった。

自分がずっと一緒に人生を歩んで行く人はこの人だと疑うことなんて一切思いつかなかった。

信じてたし、当たり前にある未来だと思っていた。


「若いからこそ…かな」


私も祐之介も純粋だったな…。

写真を置いて缶の中に入っていた手紙を見つめる。


『杏へ』

18歳の時に祐之介が贈ってくれた手紙。

高校を卒業した日、私は写真も手紙も全てそのまま残し、新たに手紙を1つ加えて自分の家の庭に埋めた。


公園にもう一度埋めようとも考えたが、次は1人で開けることを考え、近場でいいやと思って庭にした。